釉薬・タイルの色づくり アクアナノコート 加藤化学工業所


管理人の独り言2






<危ない材料?>
釉薬の中には一部危ない材料を使用することがあります。まずはSe(セレン)赤、SeとCd(カドミ)が使用されています。ここのHPの価格表の中では顔料の38赤がそれに該当します。これは1200度以上で焼いてしまえば大丈夫のように思えますが基準値を超えてしまう事例はまれに耳にすることがあります。低温だったら更にリスクはあがる?今のところ当社で使用している38で基準値を超えたという話は聞いてませんがSe・Cdが入っているはず(入ってないとでない赤)なのでできるだけ敬遠しています。大手メーカーから使用しないよう指導されたりします。(しかし同じメーカーからこの赤の見本をつくってくれという依頼もあるのでいいかげんなものですけど)タイルメーカーは少なからずこれらを意識しだしています。陶器メーカーもマグカップなど外側はSe赤でも内側は白にするなどの工夫をしているようです。陶芸はまだまだ野放しな気もしますが(私共釉薬屋や原料屋がもっと情報をユーザーの方々に説明しなければならない)ですからこの手の顔料を個人で使用するときは
・出来る限り使い切ってください  ・食器等の口をつけるようなものはなるべく使用をさけるなど少しでも意識して使用してもらうのがいいと思います。
次はPb(鉛)、鉄砂・マロン(辰砂)・均窯などは少量使用するケースがあり、パールラスターなどには多量使用(当社は製造をお断りしてます)します。曜変天目も使用されているだろう?と思います。これもまた焼いても基準値を超えることがあると聞きます。だから私自身は曜変天目の抹茶茶碗はあくまで観賞用であってそれでお茶をたてて飲むのはまず大丈夫だとわかっていても気が引けます。これも使用するときは上記ぐらいのことは意識した方がいいと思います。あと釉掛するときは手袋位はした方がいいです。
次はヒワ色などCr(クロム)を使用するケース。3価クロムが6価クロムになってしまうとか重クロム酸カリが水に出てしまうとか。これは焼いた後でいやな話は聞きませんが、釉掛のときです。この場合も排水のことを考えて出来る限り使い切ってください。手袋位はした方がいいです。
最後に焼きあがったものでも酸やアルカリに弱いもの結構があります。亜鉛結晶や先に取り上げた鉛・鉄砂・マロン(辰砂)などで極端なものは、(表現しにくいですがどんな種類の釉薬でもですが標準的な調合に比べて極端に添加量の多いものが存在する釉薬?亜鉛結晶なら亜鉛といったような)これはまれにではなく結構があります。これは洗剤などを使うシチュエーションのものを避ければいいと思います。
おもしろい、おもしろくないは別として上記ような事を避けたいときはどんな種類の薬も極端ではなくほどほどの?釉薬を使用するといいかもしれません。いろいろ書き込みましたが問題のある釉薬というのはいい色で、いい面で、いい雰囲気、のものが多いと思います。だから毒?であっても伝統として残ってきたのだと思います。わかりづらい文章で申し訳ありません。




<色ぬけする釉薬>
辰砂のようなSn(錫)・Cu(銅)・Ba(バリウム)等の入っている釉薬は焼場によって激しく色がぬけてしまいます。マロン・ライラックというのが同じような顔料です。特にマット〜セミマットくらいのライラックの釉薬は微妙な温度や雰囲気でブルーグレー〜紫くらいの色のばらつきがでます。この特徴を利用して、窯の状態を目で確認できるように、いろんな焼き場にライラックのテストピースを入れて、焼けたピースをパネルなどに貼って、窯の状態を管理しているタイルメーカーさんもあります。←それに使用するくらい不安定ということだと思います。辰砂あたりだと真赤なところと透明釉のようになってしまうところがあったりします。
 青紫〜赤くらいの顔料があります ↓           上・下同じ釉薬です↓ 焼場は違いますが同じ窯で焼成しました       ↓左右同じ釉薬です






<低温で揮発する原料の使用について>
織部やなまこや辰砂などは銅(Cu)やコバルト(Co)を使用します。これらの原料は1000℃?以下くらいで揮発します。織部の釉薬をかけたものの横にあった他の釉薬をかけたものがうっすら緑色になったりする色とびはそのせいです。窯にも色が付いたりします。更にその汚れた窯でCu・Coの入った釉薬を使用したものをまったく入れなくても窯についたそれが本体に余計な色をつけてしまいます。Cuを使用した織部をタイルで生産していてその後に白マットを生産したら異品番のような色が出て問題になったと聞いたことがあります。これは想像ですが1200℃以上の窯の中でこれらは本体から離れて雲のようにふわふわと浮いていて、冷却されるにつれて下がってくるのかな?それで余計なところにも色をつけてしまうのではないかと思います。(くどいようですが想像です)それで私共、釉薬屋は何もこだわりがなければ、織部は鉄(Fe)とブルーの顔料を使用してCuを使用しないでつくったりします。(それは織部ではないかもしれませんが焼けてしまえば同じなので)なまこも生コバルトを使用するのをなるべく避け、ブルーの顔料をできるだけ使用するようにしています。顔料の中にCuやCoはもちろん入ってますがそれらが入っている顔料はアルミナ(Al)もたくさん入っているので融点が上がります。こんなことをすることで窯や棚板やサヤをできるだけ痛めないような釉薬になります。
あとフリット(ガラス粉)の使用も色とびではなくつやとびすることがあります。フリットの多く入った透明釉をかけたものの横にマット釉をかけたものがすぐとなりにあったりするとつやが変わってしまうところが出てきたりすることがあります。フリットで融点が下げてあるからだと思います。だからこの場合は単純に窯の温度と釉薬の相性が悪いだけで、フリットの入っていない透明釉に変えるか温度を少し下げてやればいいかと思います。これは温度にあった釉薬を使用すればということなので、つくる方としてはあまり意識はしてません。




<基礎釉と顔料の相性>
いろんな色の釉薬の顔料がありますが、どんなタイプの釉薬にも使用できる万能な顔料は少なく、発色させるのに条件のあるものが多いです。
Zr系の顔料などは、ほぼ万能にちかいです。コーラルピンク、トルコブルー、プラセオイエロー、バナジウムイエロー、Zr系ではないですがブルー、グリーンあと高価ですがレッド系、マンダリン、オレンジなどです。

ねり込み用の顔料は土に近い成分の釉薬なら発色しますが、通常の釉薬だと発色しなかったり、色が変わったりします。
クロマイトグレーが茶系になったり、モスグリーンが茶系に、チタンイエローやマンガンピンクはほとんど色がつかなかったりなどです。

釉薬用の顔料でも、基礎釉の成分で違う色になったり、発色しなかったりします。
Znなどが添加された釉薬ではこげ茶に発色しても、Ba系の釉薬だとグリーン系になったり、黒がグリーンになったりします。
コバルトブルーはタルクマットだと紫に、ライラック、マロンはBa系の釉薬以外ではほとんど発色しなかったりします。

あと、相性ではないですが、粒子にコーティングしてあるようなレッド系の顔料などは摺り込みすぎると、色が落ちてしまうので後入れで軽く摺り込む、などの注意事項のある顔料もあります。




<素地(粘土)と釉薬>
タイルの原料や粘土の成分等で、上にかける釉薬の色や結晶などに影響を与えます。釉薬の調合によってその差の大きなものから小さなものまであります。鮮やかな色や結晶の出る窯変の伝統釉などが大きく、くすんだ色やZrで失透させたシンプルなカオリン・タルクマットなどが小さくなる傾向があります。

釉薬をかけないで焼いた白とグレーのタイル                  亜鉛結晶:色・結晶ともに大きく影響する               Mn系:結晶?ツヤ?に影響している


                                      Fe系:色・結晶ともに影響する                                         Su系:色の彩度に影響する


  Ti・Zn系:色・結晶ともに影響する                         セミマット(きれいな色)色の彩度に影響する       セミマット(くすんだ色)あまり影響がない





<スプレーガン>
かけるものによって使用するスプレーガンを使い分けています。穴の径の大きいものは釉薬用、小さいものは塗料用で使用しています。
釉薬は斑点を入れたりするので径が大きめのものを使用します。それでも出ないときは芯を抜いたりします。

    ↓25(釉薬で使用)    ↓15(無機塗料+マイカ入りで使用)     ↓25           ↓15
 

どちらも塗料用で使用しています。(マイカ等を入れないもので使用)のせたい厚み等で使い分けします。
 

釉薬をエアーをしぼって斑点でスプレーしたものです。 ←エアー高め(斑点細かめ)〜低め(粗め)→
 

ボカシ
 




<釉薬の厚みの管理>
普段のタイルの施釉の厚みの管理の方法です。皿などの平らなものなら同じような方法で管理できるのではないかと思います。
決まった比重・重量・サイズでおこないます。斑点施釉も同様です。
はかりの上に決まったサイズの生のタイルピース(画像は45mm×95mm)をのせて0gにします。

釉薬(画像の釉薬は比重が1.5にしてあります)を基準(今回は4g)を目指してかけていきます。
毎回同じことをすれば毎回おなじ厚みのものができます。




<温故知新?>
メーカーさんに試作用にいただいた、青磁の器にパールマイカ入りセラミックコーティングをしてみました。
画像ではわかりにくいかもしれませんが、深みがあって、かなりかっこいいです。そして親水機能のおまけつきです。
 
いつもは100均で買ってきた器で試作テストしていますが、やはりメーカーさんのものはいいです。
伝統釉+アクア ナノ コート(無機塗料)、温故知新?って感じです。




<オリジナル?の釉薬>
個人の方からお問い合わせがあったときも、レギュラーのものでなくできれば試作して、お客さんのオリジナルの釉薬になるようにこころがけています。
試作をすることで、商品開発のヒントにもなります。特にシンプルなものの組み合わせの発想などは、感心させられることが多いです。
開発は縦より横が大切だと認識させられます。





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